君

其の賢い頭脳で
気狂い染みた気遣いを振舞う

紳士よりも紳士的

いつでも味方には愛を
いつでも敵には憎悪を

純粋且つ叙情的な君は

赤く開いた扉の向こうで
元気にお過ごしですか

君の魂を召喚する様に
十年前の歌を繰り返しながら
君の苦手なお酒も
今宵くらいは飲みましょう

応えはなくても答えは
いつも胸の中に

ありがとう

未完という物語を選んだ君と
オリオン座流星群に
 

三角の視覚

愛のある城で
愛を求める三角形は

箱の中の小宇宙に散らばる
愛の欠片を

眼で愛でるのです

現実よりも確かな
優美な世界では
その欠片が星になることを
知っているから

だからこそ
私は祈るのです

彼らの世界が
美しくあり続けます様に

彼らの二つの眼が
美しくあり続けます様に

またお会いしましょう
 

十二月二十六日

歪んだ平行線の美しさを

共鳴し合える夢見心地の綱渡りは

ワインを彩る六月と

余韻を嗜む二月の

とある十二月の通底器




またお会いしましょう

射界現象

歪んだ月を背に
一秒後の影を踏む

思考は錯誤し
誘惑の言葉

「もう諦めてしまいなよ」

そこへすかさず
優美な言葉

「どうか壊れませんように」

魔が差した世界に
陽が射した私の

「おはよう」

優美な世界
 

傘

焦燥の時雨には傘を刺して

慰めの夕日には傘を投じて

衝動の秋雨には傘を翳して

涙目の夜空には傘を閉じて